申し送りの漏れや、食事介助のやり方のばらつきは、「言葉だけの決まり」を各自が頭の中で読み替えるところから生まれます。防ぐには、受け方と伝える項目、介助の手順を、写真つきの短い 1 枚にして、誰が見ても同じ形にしておくのが近道です。
この記事では、施設の責任者向けに、何を・どう撮れば手順書の材料になるかを表にし、1 枚に仕上げる手順と、夜勤の職員にも届ける方法をまとめます。業務マニュアルのウェブサービス「JUNPAS(じゅんぱす)」で実際にできることに絞って書きます。
文章の決まりは、人によって読み方が変わる
「入所者さんの様子を、変化があれば伝える」。こう書いてあっても、何を変化と見るか、どこまで伝えるかは職員ごとに違います。食事介助も同じで、「安全な姿勢で」と書いてあるだけでは、勤務帯によってやり方が少しずつ変わります。
写真は、この読み替えの余地を小さくします。姿勢、食器の位置、介助者の立ち位置が 1 枚で見えれば、文章で説明しきれない部分が伝わります。1 画面に 1 ステップ、写真と短いひとことにすると、夜勤の暗めの時間帯でも手元で確かめやすくなります(残し方の考え方は「手順書を作っても見てもらえないのは、残し方の問題かもしれない」にまとめています)。
ここで先に、できないことを書いておきます。JUNPAS は入所者さん一人ひとりの日々の記録をつける仕組みではありません。残るのは「施設としての手順」と「職員がその手順をいつ見たか」です。日々の申し送りの中身は、これまでの記録の仕組みのままで構いません。JUNPAS が受け持つのは、申し送りの受け方・伝える項目・介助のやり方を、全員が同じ形で確かめられるようにすることです。
申し送り・食事介助で、写真に撮る場面と撮り方
何を撮るかが決まると、手順書づくりは半分終わります。次の表は、申し送りと食事介助で写真にしておくと役に立つ場面と、撮り方の目安です。
| 場面 | 写真に撮るもの | 撮り方の目安 |
|---|---|---|
| 申し送りの場所 | 申し送りノート・ホワイトボード・端末の置き場所、集まる位置 | 立つ位置から、部屋全体が入るように 1 枚 |
| 伝える項目 | 申し送り用紙・記入欄の「どこに何を書くか」 | 記入例を書き込んだ状態で、真上から。個人名は伏せる |
| 受ける側の確認 | 確認印・復唱の場面(職員のみ) | 利用者さんが写らない時間に、職員だけで再現して撮る |
| 食事の準備 | 配膳の並べ方、食器・とろみ剤・自助具などの置き位置 | 手前の目線の高さから。左右の向きが分かるように |
| 食事介助の姿勢 | 介助する職員の立ち位置・椅子の高さ・向き | 職員どうしで再現して撮る。利用者さんが写る場合は施設の決まりに従う |
| 食後の片付け | 下膳の置き場、口腔ケア用品の場所 | 置き場の全体と、近づいた 1 枚の 2 枚組 |
撮影のときは、利用者さんの顔や名前が写り込まないようにするのが基本です。実際の介助の場面は、職員どうしで再現して撮ると、写り込みを避けられます。
入浴のように写真を撮りにくい場面もあります。写真の無いステップには、AI がイメージ図を仮に置けます。画面には「イメージ図」と表示され、実際の写真ではないことが分かります。あとから実際の写真に差し替えることもできます。
手順書 1 枚の作り方(5 つの手順)
介護の業界を選ぶと、ひな形が入った状態で始まります。ひな形は 5 本で、始業時の申し送り・健康確認、食事介助、入浴介助、排泄介助、移乗・移動介助です。この 5 本のうち、「始業時の申し送り・健康確認」と「食事介助」を、自施設の形に直すところから始めるのが無理のない進め方です。
- ひな形を開き、施設の決まりと違う所に印をつける。 食事介助のひな形の注意書きには「顎を上げた姿勢は誤嚥の危険」などが入っています。ひな形は一般的な手順です。施設の決まりと看護職員の指示に合わせて直してから使ってください。
- 上の表の場面を撮る。 編集画面には、ステップごとに撮影のボタンと、撮りためた写真から選ぶボタンがあります。
- 1 ステップに、ひとこと添える。 1〜2 文で十分です。申し送りなら「伝える項目は 3 つ」のように、数を言い切ると抜けが減ります。
- 責任者が確認して公開する。 AI に下書きを作らせることもできますが、AI が作るのは下書きです。題名に高所・電気・火気・薬品などの語がある手順は、公開前に責任者の承認が必須です。そのほかは、承認制にするか直接公開にするかを施設で選べます。介助の手順は、看護職員や専門職の確認を通してから公開するように、施設の中で決めておくと安心です。
- QR コードを貼る。 公開した手順は QR で開けます。申し送りの場所や配膳台、休憩室に貼っておけば、職員はスマホで読み取るだけです。
作成と編集の画面は、横向きかパソコンのほうが操作しやすい作りです。現場で撮って、事務所のパソコンで言葉を整える、という分担をおすすめします。
夜勤・パートの職員にも、同じ形で届ける
QR から開く見方に、アプリのインストールは要りません。閲覧だけの職員は席を使わず、人数の制限もないため、パートや夜勤の職員が増えても料金は変わりません。
また、職員ごとに、どの手順書をいつ見たかが操作の記録に残り、手順書ごとの読了人数が分かります。「申し送りの手順は全員が一度は見たか」を、聞いて回らずに確かめられます。ただし、すべての操作が記録されるわけではありません。法律で決まった研修の代わりにもなりません。研修は別に受けていただき、JUNPAS には施設の手順を読んだ記録を残す、という分け方が現実的です。
見る言葉も選べます。閲覧の画面は、日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語から選べます。訳は AI 翻訳で、日本語の原文が正式な内容です。
まずは 1 枚、次の新人から
最初から全部の手順書をそろえる必要はありません。申し送りの用紙と、食事介助の姿勢の 2 枚を、写真つきで作ってみてください。次に入る新人から、横について一から教える時間が少しずつ減っていきます。
新人の 1 週目に何から見せるかは、読みもの『新人の 1 週目に何を見せるか』に書きました。
介護の業種ページでは、5 本のひな形の中身を確かめられます。
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