新人の 1 週目に何から見せるか。答えは、仕事の流れの順ではなく、「間違えると取り返しがつかないこと」「毎日必ず出てくること」「一人でやる日の前日までに見せること」の順です。
この 3 つを、作業ごとに当てはめていけば、1 週目の順番は決まります。以下、その決め方と、5 日間の表の例を書きます。
教える手間は、どのくらい足りていないか
厚生労働省の令和 6 年度「能力開発基本調査」(常用労働者 30 人以上の事業所が対象)では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所が 79.9%でした。その問題点の内訳(複数回答)は、「指導する人材が不足している」が 59.5%でいちばん多く、「人材を育成しても辞めてしまう」が 54.7%、「人材育成を行う時間がない」が 47.4%と続きます。
教える人の手が足りないのは、珍しいことではないということです。足りない手で教えるなら、何を見せるかを先に絞るほうが現実的です。
順番を決める 3 つの問い
作業を書き出して、それぞれに次の 3 つを問います。
- 間違えると取り返しがつかないか(けが、事故、お客さまへの損害、やり直しのきかない作業)。「はい」なら 1 日目から 2 日目に見せます。
- 毎日、必ず出てくるか。「はい」なら、早く覚えるほど、あとの全員の手間が減ります。
- 一人でやるのは何日目か。一人になる日の前日までに、見せ終えておきます。
ここで大事なのは、仕事の流れの順に教えないことです。流れの順に教えると、最初の 3 日が「朝いちばんの作業」で終わり、肝心の「間違えると困ること」に最後まで触れないまま、一人で任せる日が来ます。
迷ったら、1 の問いを最優先にします。毎日出てくる作業でも、取り返しがつかない作業のほうが先です。
5 日間の例(業種を問わない型)
次の表は、入ってきた人が 5 日目の終わりに「一人で任せる作業」を持つと仮定した例です。作業の名前は、自社のものに置き換えてください。
| 日 | 見せること | 危険度 | 頻度 | 一人でやる日 |
|---|---|---|---|---|
| 1 日目 | 入場・退場の決まり、安全の確認、連絡先 | 高 | 毎日 | 初日から |
| 2 日目 | 道具・機械の扱いの禁止事項、火・電気・高所のある作業の約束 | 高 | 作業による | 見せる側と一緒に |
| 3 日目 | 毎日出てくる基本作業(準備・片付け・記録) | 中 | 毎日 | 3 日目の午後から |
| 4 日目 | 週に数回の作業、お客さま対応の決まり | 中 | 週数回 | 5 日目から |
| 5 日目 | 月に数回の作業、困ったときに誰に聞くか | 低 | まれ | 2 週目以降 |
「一人でやる日」の列が、表の背骨です。この列が埋まらない作業は、1 週目には見せなくて構いません。まれにしか出てこない作業まで 1 週目に詰め込むと、最初の 1 週間で覚えることが多すぎて、肝心の安全の約束が埋もれます。
順番を手順書の形に残し、1 週目のあとに見直す
順番が決まったら、1 日目から 5 日目までを手順書に残します。教える人が変わっても、同じ順番で見せられるようにするためです。
業務マニュアルのウェブサービス「JUNPAS(じゅんぱす)」では、1 画面に 1 ステップで、写真と短い文を置きます。現場では QR コードを読み取るだけで開け、見るだけの人にアプリのインストールは必須ではありません。入口に QR を貼っておけば、新人が自分のスマートフォンで、その日に見る手順を開けます。
JUNPAS で順番づくりに使えるところを、実際にできることだけ挙げます。
- 業種を選ぶと、その業種のひな形が入る。 21 業種に対応し、建築・内装、ガス、電気工事、不動産仲介、ビルメンテナンス、介護などがあります。空の画面から作り始めず、自社のやり方に置き換えていけます(対応業種のページ)。
- 誰が、いつ、どのステップまで開いたかが残る。 「3 日目の手順を、新人が最後まで見たか」を、声をかけて聞かなくても確かめられます。ただし、すべての操作を記録するわけではありません。
- 分かりにくいところを、新人から返せる。 手順の画面の✏️ボタンから「わかりづらい」「まちがいがある」「改善提案」を作成者に報告できます。1 週目に新人が引っかかった所は、そのまま次の新人のための直しになります。
- AI は下書きを作る。 題名に高所・電気・火気・薬品などの安全の語がある手順は、公開の前に必ず責任者の承認が要ります。1 日目と 2 日目に置く安全の手順は、この関門を通ることになります。
順番は、一度決めて終わりではありません。1 週目が終わったら、新人に聞いてください。「いちばん不安だった作業はどれか」「先に見たかったものはどれか」。その答えで、表の入れ替えが要るかどうかが分かります。
たとえば「3 日目に見た作業を、2 日目にも知りたかった」と言われたら、頻度の列を見直します。思ったより毎日出てくる作業だったということです。手順書の順番を入れ替えて、次の新人から変えればよく、教える人の頭の中にしまっておく必要はありません。
まずは 30 日、試してみる
ご利用開始から 30 日間は無料トライアルです。クレジットカードは不要で、終わっても自動で課金されることはなく、有料プランを選ぶまで停止するだけです。メールアドレスだけで、2 分ほどで始められます。次に新人が入るまでに、1 日目の分だけ作ってみるのも一つです。